4EUエンジン用デジタルCDIの製作 その1

さて、作る前にアナログCDIの動作原理を確認しておきたい。

アナログCDIは、エキサイタコイルで発電した交流高電圧(バッテリー点火の場合はバッテリーからインバータで発生させた高電圧)をコンデンサへチャージしておき、フライホイールに取り付けられた鉄片が、コイル状のピックアップセンサーの近傍を通り過ぎる時のコイル内の磁束密度変化に伴って発せられる起電力(点火信号)を用いてサイリスタをターンオン(ポイント点火の場合は物理的に接点をオンに)し、イグニッションコイルの一次側へチャージした電力を突っ込むと言ったもので、ウン十年前から存在するあたり特段難しいことをしているわけではない。実際に、アナログCDIの製作例はインターネット黎明期(?)の時点で既に存在し、HT-Rocket回路などであまりにも有名である。むしろ動作原理はこっちを見たほうがわかりやすいかもしれない。

一方、デジタルCDIの制御についてはアナログと比較すると例が少なく、TZRやキャビーナのCDIを自作している例(使用マイコンはそれぞれArduino(ESP32)、PIC)がある。
有名どころではOSR-CDI等がある。
こちらは様々な車種でのノウハウが共有されている上にYPVSについての制御も可能で、Win上で動くソフトを使って点火時期やYPSV開度の設定もできるらしい。ガーバーデータやパーツリストまで”クローズド”な領域に踏み込んでいけば閲覧可能なので、誰にでも簡単に作れる上にかなり完成度の高い代物だ。なにかの間違いでこのページに流れ着いたYPVS付き車両に乗っている人は、とりあえず確実に動作するんだからこちらを製作することをお勧めする。

さて、それでもこの記事を読みたい奇特な人間が居るようなので、以下にCDI製作の動機としての要点を述べる。

・YEC-CDIが不当に高いので、同性能、或いはそれ以上に点火時期を詰められるCDIを作ってみたかった
・自分の技術の腕試し
・来年は社会人なので学生生活の集大成として
・就活のネタ
・動いたらおもしろそう
・完全オリジナルでDC-CDIではなくAC-CDIのデジタルCDIを作ってる人は居ない(新規性)

念の為、CDIのACとDCの違いについてかんたんにまとめておく。


・AC-CDI:ジェネレーターの電力のみでCDIを稼働させる。マイコンの電源もジェネレータから取る場合は大抵ジェネレータのコイルにセンタータップが有り、3本の線でCDIに入力している(少なくともヤマハ車の場合はそう)。これは余談ですが、スーパーカブは交流のうち半分をバッテリー系に、半分をECUに送ることでバッテリーが上がってもインジェクションを駆動できるようにしているようです。そのため全波整流化を行うと一部電蝕が発生する部分があるらしい……とカブ乗りが言ってた。しらんけど。


・DC-CDI:バッテリーから電力をとり点火を行う高圧発生に関しては内蔵インバータで12Vから昇圧している場合と、高圧のみエキサイタコイルから得ている場合がある。前者はDC-DCI(CDI特別してイグナイタと呼ばれている?)の純正パーツ等、後者はOSR-CDI等が挙げられる。

ちなみにAC-CDIは基本的にアナログばかり、DC-CDIはデジタル制御…というイメージがありますが、AC-CDIでマイコン制御をしている市販品は当然存在します(ポッシュのYECコピー品と呼ばれるデジタルCDIがそうです)

デジタルDCIの利点としては、アナログと違っていくらでも点火時期を変更させることができるので、理論上はかんたんにYEC-CDIの安全マージンを超える点火時期に設定することができると思います。できるといいな。
他にはキャブセッティングのガバを点火時期で吸収することができる、面研などで圧縮比を変えてパワーを出さずとも、点火時期を変えれば圧縮比は低いまま同じパワーを出せる等のメリットがありそうです。しらんけど。

いずれにせよ、点火時期を自由にいじれるCDIというものは、異常な点火時期に設定した場合に即破壊につながること以外思いつきません。もしかすると他にもあるかも。

以上のことを踏まえて、今回作るCDIについて次のような目標設定を行います。

・YEC-CDIと同等以上の可変点火MAPなデジタルCDIの作成
・可能であればAC-CDI、ハーネスポン付け

実現可能性については、前述の通り4EU向けのデジタルCDIとしてはPOSHからYECコピー品と言われるデジタルCDIが既に発売されており、DIPで切り替えることで点火時期をある程度変更できます。既に発売されているなら作れないことはないでしょう。

AC-CDI(デジタルCDI)において最も難しそうなのは安定した電源の確保です。それも、セルを回しただけのジェネレータから来る弱々しい電力でマイコンを起動しなければ点火させることはできません。
この点に関しても、POSHのデジタルCDIが発売されているので作れるはずです。また、ハード側でマイコン起動までの時間はアナログ点火CDIとして動作させる、等をすれば初爆の制御を行えるのかという問題は解決できそうです。
とはいえ、いきなりAC-CDIを作るのはたいへんそうなので、まずはDC-CDIを作ってから電源部を作り、その後電源部を実装という形を取りたいと思います。

ということで、次回はCDIを作るために必要なデータ集めです。エキサイタコイルの発生電圧、ピックアップコイルの出力波形、YEC-CDIの点火時期を走行ログで計測、等です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です