フォロワーに頼まれて、よくわからないメーカーのよくわからないカセットデッキの修理を頼まれた。テープの送り速度の調整なので、なんてことはない、きちんとテストテープで速度良性してやれば良い。と、このときまでは思っていた。
マジで情報がないけど、適当に半固定抵抗回すだけで良いと思ってました。
整備性は普通かな?パネルを開けたら目の前にキャプスタンモーターがある。この手の上部パネルはネジ1本で止まっていて爪で引っかかっているだけものが多いような気がするが、これは上下ともネジ止めで4本もビスを使っている。
キャプスタンモーターに調整用の穴が…
無い!
しかも配線がかなり根っこから傷んでる。まあこれは後で直すとして、たぶんメカを外せば半固定抵抗があると思います。
なお、メカのデッキのネジは以前誰か開けたらしく、頭が舐め散らかしていた。しかもM2.6。しばくぞ。
半固定抵抗が……無い!!!!
クリスタルの近くにあるけど、コレはなんか別のものっぽい。モーターの回転数制御をしているであろう半固定抵抗が、どこにも見当たらない。ちなみに、クリスタル左上の半固定抵抗はパネルの底面の板を外せば裏側からアクセスして回すことができるようになっていた。
しかし困った。回転数調整不可のベルト駆動タイプのキャプスタンモーターなんて、修理歴短いとはいえ聞いたことがない。
一部機種で、回転フィードバックするタイプとかは調整不可(軸が摩耗するとズレてしまう)な場合があるっちゃある。
しかしこんな車載のカーオーディオに搭載されるような方式では無いだろうし、明らかに回転フィードバック用のセンサーも見当たらない。モーターの駆動信号を見ても、ただただDC何Vかが印加されているだけだった。
色々調べたが、どうにも埒が明かないのでモーター本体を分解することにした。もしかすると半固定抵抗が調整できないように塞がれているのかも知れない。そんなことするメリットは無いけど…
カシメを起こして開けてみた。さてさて、制御基板…
……???なにこれ
これって……?もしかして……?
機 械 式 ガ バ ナ 制 御 ? ? ? ?
いやそんなことある!??!そんなことするコストより基板載せたほうが良くない????
調べてみると、ほとんど情報はないけれど…どうやら機械式ガバナ制御タイプのキャプスタンモーターが存在するらしいことを知りました。マジでこんなもんどうやって調整するんだよ…こんなわけらからん設計するような会社、生き残れんのか…?あ、もう会社畳んでましたね笑
どうやら回転によって一定回転数を超えるとコイルへの通電が切れる→回転が落ちると通電して加速 という感じで回転数制御をするらしい。接点の離れるタイミングをバネの具合で調整できるネジが有るので、それを回すと調整できそうだ。親の敵のようにノイズ対策のコンデンサが入っているのはそのためか?
たぶん調整するには専用の治具か環境が必要です。でなければ、カシメおこして分解してネジ締めて組戻して(組み戻さないとモーターが筐体アースなので通電しない)、テープ再生して測定してだめならまたバラしてネジ調整して…の繰り返しですね。誰がそんなめんどくさいことやるねんアホ!!!
一つだけ気になる点があり、それは今回の場合、何故か回転数が速い側にズレていたことです。
バネがへたるとか、接点の摩耗で回転数が低い側にズレる(設計より早期に接点が開く)ならともかく、回転数が高い側にズレるというのはよくわからない。
回転数のズレの疑問はどうあれ、こんなものを調整していては日が暮れるので…とりあえず抵抗で調整してみた。モーターの電流制限らしき抵抗が発熱で焼けていたので、これが原因では?という見立てである。
明らかに発熱で被覆が溶けている。
とりあえず、いい感じの回転数を探るために適当な抵抗+ボリウムで探ってみた。最終的に選定した抵抗+半固定抵抗で電流制限をかけてやればいけるか…?と思っていましたが、電源電圧の変動で回転数が変動しました。そりゃそうだ。
とはいえ、電源電圧が12V→14Vに変動した程度でキャプスタンモーターの駆動電圧が変動して、結果ガバナの回転数が変わるようじゃ…普通に正常な状態であっても結構ガバガバな回転数制御なのでは?と思うのは私だけでしょうか…
もうこんなゴミどうしようもないので、潔くモーターを交換することにした。幸い、中身の機構は妙ちきりんだが外見は標準的なキャプスタンモーターだったので、普通に交換できると思います。適当に寸法を調べて、寸法記載があって使えそうな物を見つけたのでアリエクスプレスで購入した…ら
サイトの説明と違うものが届いた。あほくさ。
支那↑っぽいな これ 支那↑っぽいな これ ボケェイ!
しかし、メカ側の固定プレートに、いかにもこのモーターの他に色々設計変更が合ったときに対応できそうな固定穴が複数空いていたので取り付けできるかチャレンジしてみたが…イジェクトのメカと干渉すしてしまう。
ゴムベルト駆動なので長穴でオフセットして固定することも考えたが、そういう不確実な修理法は避けたい。車載器なので振動で緩んだりしたらフォロワーのやつとはいえ流石にマズい。この案件は年内にクローズしたいので、手持ちのデッキの中で使えそうなものを探してみることにした。
手元に転がっていた、なんかのトヨタの純正デッキを開けてみた。お、なんかいけそうだぞ。
このデッキは別のフォロワーからの貰い物なのでありがたく部品取りとして活用する。値段は知らん。そんな高くないと思ってるけど、こわいから見ない。
摘出したものがコレ。ネジ穴の位置は一緒。電源もGNDとDC入力があるのみ。軸の太さも高さも完全に一致したので、写真のようにプーリーを移植できた。
組み付けた。駆動ノイズがそこそこ出てたので適当にコンデンサで付けて対策しておいた。
なんかしらんけどちゃんと動いてるっぽいので、モーターの調整用ポテンショをマイナスドライバーで回して調整する。
しかし、デジタルオシロの波形測定は、カセットの再生波形にある程度ゆらぎがあるぶん常に表示の周波数も変動するため確実に合わせられない。そもそもオシロもショボいので波形計測がショボい。
周波数カウンタ等があれば一番良いのだろうが、数年前に譲ってしまった。波形長を目視して目盛り見つつ調整するのもあまりにも原始的すぎてさらに確実性に欠けるため、最近は以下の方法で速度調整をしている。テストテープが確実に信頼できることが前提の方法です。
①低周波発振器(もしくはPC)で440Hzを出力して、それをオシロの2chに入力して2chでトリガをかける
②1chにテストテープを再生したデッキの音声出力を入力する
③位相差がない=1chの波形がなるべく(2chでトリガしている基準周波数に合致することで)左右に流れず静止する ように調整する
この調整法が現有設備で自分の中では最も正確に調整できる気がします。アナログはこういうときに便利ですね。
波形が左右に流れるのを見ながら、いい感じに波形が静止…するのが一番いいですが、そこまで調整を追い込めないので…440Hzで1.5秒以上かけて位相が360度ズレる程度に追い込みました。1.5秒で0.2msecテープが早く/遅く巻かれることになります。90分だと8秒くらいのズレ…と言うと結構デカイですが。これ以上は無理です。
この方法で、ウチの録音用のデッキは完全に波形が静止するところまで追い込めました。
テープ送り速度調整後、市販のテープを再生して耳で確認。完璧に動作しています。修理完了です。
知見:ダルいキャプスタンモーターは、気軽に交換しても良い。